で初対面の挨拶が固苦しく、尊大にさえ見えるのであるが、こっちのほうから遠慮なく突込んで行くと、急にはにかんで、なかなか親切な、気前のいいとこを見せてくれる。心の弱いのをかくそうとして、あんな尊大の挨拶をするのではなかろうか、と思われる。周さんに対して、あんなまずい手紙を突きつけたのも、決して支那のひとが劣等だからという侮辱の意味ではなくて、かえって、支那の秀才に対する畏敬《いけい》の気持も含まれていたのではなかろうかとさえ思われる。敬愛の念が、ぎくしゃくと奇妙に倒錯《とうさく》して、ついに、仙台あなどるべからず、とでもいうような「張り合う」気持などが出て来て、あんなまずい手紙を書いてしまったのではあるまいか。真面目な人が、へんに思いつめた揚句《あげく》で書くと、あんな工合に書体も奇怪な金釘流《かなくぎりゅう》になり易いものだし、また文章も、下手くそを極めるもののようである。要するに、まじめな人なのである。その頃、周さんが次第に学校の勉強に熱意を失いかけているのを見てとり、或いは自分があんな馬鹿な手紙を差し上げた事も、その周さんの不勉強の原因の一つになっているのではあるまいか、と非常に気
前へ
次へ
全198ページ中186ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
太宰 治 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング