想の死骸《しがい》からのがれたくて、新しい学問にあこがれ故郷を捨てて南京《ナンキン》に出たのです。それから後の事も、全部あの時、松島で話したように思います。しかし、僕はこの夏、東京へ行って、さらにもっと苦しい深い竹藪に迷い込んでしまいました。僕には、それが何であるか、わからない、いや、わかっていても、それをはっきり言うのは、おそろしい。もし、僕の疑惑が不幸にして当っていたら、僕は自殺するより他は無いかも知れない。ああ、この疑惑は僕の妄想《もうそう》であってくれたらいい。はっきり、言いましょう、僕はこのごろ、同胞の留学生たちの革命運動にさえ、あの不吉な大袈裟な身振りの匂いを、ふっと感じるようになったのです。熱狂の身振りに、調子を合わせて行けないというのが僕の不幸な宿命かも知れない。僕はあの人たちの運動は、絶対に正しいと思う。僕は孫文を尊敬している。三民主義を信奉している。それこそ宝物のように大事にしている。これが、僕の、最後の、たのみの綱だ。この思想にさえ見放されたら、僕は浮藻《うきも》だ。奴隷だ。それなのに、僕はいま、あの竹林の名士の運命をたどりかけているのだ。僕はずいぶん努力した。留
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