もう乃公《おれ》は以後、礼のレの字もいうまい、という愚直の片意地が出て来て、やけくそに、逆に礼の悪口をいい出したり、まっぱだかで大酒などという乱暴な事をはじめるようになったのではないかと思うのです。しかし、心の底で、礼教を宝物のように本当に大事にしていたのは、当時この人たちだけだったのです。当時、こんな『背徳者』のような態度でもとらない事には、礼の思想を持ちこたえる事が出来なかったのです。この時代の『道徳家』たちは表面はなはだもっともらしい上品ぶった態度をしていたが、実はかえって礼の思想を破壊しているものであり、全然、礼教を信じていなかったのです。そうして信じている者は、『背徳者』となって竹藪に逃げ込み、ごろつきのように大酒を飲んだのです。僕は、まさか、いま竹藪にはいって、まっぱだかで大酒を飲もうとは思いませんが、しかし、気持は、やはり竹藪の中をさまよっています。僕は儒者先生たちの見えすいた偽善の身振りにあいそが尽きたのです。このことに就いては、あの松島の宿でも、あなたにたくさんたくさん告白した筈ですが、思想が客間のお世辞に利用されるようになったら、もうおしまいです。僕は、この不潔な思
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