はず》なのだ。それをあの儒者先生たちは、それを末端の行儀作法の如く教えて、かえって君は臣を侮辱し、父は子を束縛する偽善の手段に堕落させてしまったのです。この傾向は、もう早くからあらわれて、あの魏《ぎ》の頃の竹林の名士なども、この礼の思想の堕落にたえかねて竹林に逃げ込んで、やけ酒を飲んでいたのです。彼等は頗る行儀が悪かった。まっぱだかで大酒を飲んでいた。時の所謂《いわゆる》『道徳家』たちは彼等を、ごろつきの背徳者として罵《ののし》り、いやいまだって上品ぶった正人君子たちは彼等の行状には顰蹙《ひんしゅく》しているのです。しかしあの竹林の名士たちだって、自分たちの生活を決して立派なものだとは思っていなかったのです。仕方が無かったのです。竹藪《たけやぶ》の他に住むところが無くなってしまったのです。世は滔々《とうとう》として礼を名目にして、自己に反対する者には出鱈目《でたらめ》に不孝などの汚名を着せ、これを倒し、もっぱら自己の地位と富の安全を計り、馬鹿正直に礼の本来の姿?M奉している者は、この偽善者どもの礼の悪用を見て、大いに不平だが、しかし無力なので、どうにも仕様がなくて、よろしい、そんならば
前へ
次へ
全198ページ中160ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
太宰 治 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング