氏は、私が興奮しはじめたら、急に落ちつき払った態度を示し、「相手は、矢島ひとりではない。田舎っぺいの取巻きがたくさんいる。僕はこの機会に、あいつらの排他的な思想を膺懲《ようちょう》してやろうと思っているのだ。お互いに紳士じゃないか。思想の合戦で行こう。」
「でも、津田さん。私も田舎っぺいですよ。」どんな意味で使ったにせよ、私には、田舎っぺいという言葉は耳に快くなかった。地元の矢島も頗る面白からぬ人物だが、しかし、こんな言葉を使用する東京人の津田氏の心理もあんまり高潔とは言えない、どっちもどっちだ、と思い直してしまった。
「いや、君はべつだ。君は、決して田舎者じゃない。君は、そうだね、」と困ったような顔をして、「或る意味では、むしろ、都会人とでも言いたいのであるが、」といよいよ窮して、「そうだ、君は支那人だ! そうなんだよ、君。」
 私は、あっけにとられた。
「君は、だから、同じ東北人の矢島たちからも敬遠されているのだ。」と津田氏は、いかにも、もっともらしい口調で、「つまり君の現在の立場は、周さんと同一なのだ。僕は決してそうは思わないが、君の顔が支那人に似ているというのがクラスの定評なの
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