ても、僕は気取っていた。「わかい時から名誉を守れ!」
 扇之介、愚劣なり。酔っても醜怪を極めたり。そうして帰りに、破廉恥《はれんち》な事を僕に囁《ささや》いた。僕が笑ってお断り申したら、扇之介の曰《いわ》く、
「あたしゃ孤独だ。」
 あきれてものが言えない。


 十二月八日。金曜日。
 日光が出ているのか、雨が降っているのか、わからない。始終、泣きたい気持ばかり。名古屋にいるのだ。
 早く東京へ帰りたい。旅興行は、もういやだ。何も言いたくない。書きたくない。ただ、引きずられて生きています。
 性慾《せいよく》の、本質的な意味が何もわからず、ただ具体的な事だけを知っているとは、恥ずかしい。犬みたいだ。


 十二月二十七日。水曜日。
 晴れ。名古屋の公演も終って、今夜、七時半に東京駅に着いた。大阪。名古屋。二箇月振りで帰ると、東京は既に師走《しわす》である。僕も変った。兄さんが、東京駅へ迎えに来てくれていた。僕は、兄さんの顔を見て、ただ、どぎまぎした。兄さんは、おだやかに笑っている。
 僕は、兄さんと、もうはっきり違った世界に住んでいる事を自覚した。僕は日焼けした生活人だ。ロマンチシズ
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