好《かっこう》で立っていて
「おなかが、おすきになりません?」
 と親しそうに笑いながら、尋ねた。
「ええ、でも、私、パンを持ってまいりましたから」
「何もございませんけど」
 と病身らしいおかみさんは、だるそうに横坐りに坐って長火鉢に寄りかかったままで言う。
「この部屋で、お食事をなさいまし。あんな呑《の》んべえさんたちの相手をしていたら、一晩中なにも食べられやしません。お坐りなさい、ここへ。チエ子さんも一緒に」
「おうい、キヌちゃん、お酒が無い」
 とお隣りで紳士が叫ぶ。
「はい、はい」
 と返辞して、そのキヌちゃんという三十歳前後の粋《いき》な縞《しま》の着物を着た女中さんが、お銚子《ちょうし》をお盆に十本ばかり載せて、お勝手からあらわれる。
「ちょっと」
 とおかみさんは呼びとめて、
「ここへも二本」
 と笑いながら言い、
「それからね、キヌちゃん、すまないけど、裏のスズヤさんへ行って、うどんを二つ大いそぎでね」
 私とチエちゃんは長火鉢の傍《そば》にならんで坐って、手をあぶっていた。
「お蒲団《ふとん》をおあてなさい。寒くなりましたね。お飲みになりませんか」
 おかみさんは、
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