まは、まだお元気なのよ。ごはんだって、おいしいおいしいとおっしゃって、……」
「仕方がない」
「うそだわ。ね、そんな事ないんでしょう? バタやお卵や、牛乳をたくさん召し上ったら、なおるんでしょう? おからだに抵抗力さえついたら、熱だって下るんでしょう?」
「うん、なんでも、たくさん食べる事だ」
「ね? そうでしょう? トマトも毎日、五つくらいは召し上っているのよ」
「うん、トマトはいい」
「じゃあ、大丈夫ね? なおるわね?」
「しかし、こんどの病気は命取りになるかも知れない。そのつもりでいたほうがいい」
 人の力で、どうしても出来ない事が、この世の中にたくさんあるのだという絶望の壁の存在を、生れてはじめて知ったような気がした。
「二年? 三年?」
 私は震えながら小声でたずねた。
「わからない。とにかくもう、手のつけようが無い」
 そうして、三宅さまは、その日は伊豆《いず》の長岡温泉に宿を予約していらっしゃるとかで、看護婦さんと一緒にお帰りになった。門の外までお見送りして、それから、夢中で引返してお座敷のお母さまの枕《まくら》もとに坐《すわ》り、何事も無かったように笑いかけると、お母さ
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