ている。僕の芸術は、おもちゃの持つ美しさと寸分異るところがないということを。あの、でんでん太鼓の美しさと。(一行あけて)ほととぎす、いまわのきわの一声は、「死ぬるとも、巧言令色であれ!」

 このほか三通、気にかかっている書簡があるのだけれど、それらに就いては後日、また機会もあろう。(ないかも知れぬ。)

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追記。文芸冊子「非望」第六号所載、出方名英光の「空吹く風」は、見どころある作品なり。その文章駆使に当って、いま一そう、ひそかに厳酷なるところあったなら、さらに申し分なかったろうものを。
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     わが儘《まま》という事

 文学のためにわがままをするというのは、いいことだ。社会的には二十円三十円のわがまま、それをさえできず、いま更なんの文学ぞや。

    百花撩乱《ひゃっかりょうらん》主義

 福本和夫、大震災、首相暗殺、そのほか滅茶滅茶のこと、数千。私は、少年期、青年期に、いわば「見るべからざるもの。」をのみ、この眼で見て、この耳で聞いてしまった。二十七八歳を限度として、それよりわかい青年、すべて、口にいわれぬ、人知れない苦しみ
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