もの思う葦
――当りまえのことを当りまえに語る。
太宰治
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)葦《あし》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)日本|浪曼派《ろうまんは》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#ここから1字下げ]
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はしがき
もの思う葦《あし》という題名にて、日本|浪曼派《ろうまんは》の機関雑誌におよそ一箇年ほどつづけて書かせてもらおうと思いたったのには、次のような理由がある。
「生きて居ようと思ったから。」私は生業《なりわい》につとめなければいけないではないか。簡単な理由なんだ。
私は、この四五年のあいだ既に、ただの小説を七篇も発表している。ただとは、無銭の謂《い》いである。けれどもこの七篇はそれぞれ、私の生涯の小説の見本の役目をなした。発表の当時こそ命かけての意気込みもあったのであるが、結果からしてみると、私はただ、ジャアナリズムに七篇の見本を提出したに過ぎないということになったようである。私の小説に買い手がついた。売った。売ってから考えたのである。もう、そろそろ、ただの小説
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