伝」は太字]も亦イエスの言行を伝うるに方《あたり》て来世を背景として述ぶるに於て少しも馬太伝に譲らないのである、医学者ルカに由て著わされし路加伝も亦他の福音書同様著るしく奇蹟的であって又来世的であるのである、イエスの出生に関する記事は措いて問わずとして、天使がマリヤに伝えし
[#ここから2字下げ]
彼(イエス)はヤコブの家を窮《かぎり》なく支配すべく又その国終ること有《あら》ざるべし
[#ここで字下げ終わり]
とある言は確かにメシヤ的即ち来世的の言である(一章三十三節)、神の言葉として是は勿論追従の言葉ではない、又比喩的に解釈せらるべきものではない、何時か事実となりて現わるべき言葉である、然るに今時《いま》は如何と云うに、イエスの死後千九百年後の今日、彼は猶太人全体に斥けられこそすれ「ヤコブの家を窮なく支配す」と云いて猶太人の王ではないのである、又「その国終ること有らざるべし」とあるも実はキリストの国と称すべき者は今日と雖も未だ一もないのである、基督教国基督教会孰れも皆な名のみのキリストの国である、真実のキリストは彼等に由て涜《けが》され彼等の斥くる所となりつつあるのである、依て知る路
前へ 次へ
全21ページ中13ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
内村 鑑三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング