仕事が與へられた。それは煉瓦工場の土擔ぎだつた。
「今日はちやあや[#「ちやあや」に傍点](父のこと)の辨當を持つてゆくの私だよ。」
「うゝん今日は俺だ。」
「咋日お前が持つて行つたんぢやないか」
「嘘つけ、おら[#「おら」に傍点]はたゞお前に隨いていつたんだ、今日こさ、俺一人でいぐ!」
 子供は大臣のオフイスにでも行つて見るやうに、父の働いてる工場にいつて見たがつた。
 皆で祖母の作つたお辨當を奪ひあつた後、結局皆でぞろぞろと長い松原を歩いていつた。
 野の中に蛇の目傘を擴げたやうな穹窿形の屋根が三つ、青麥の波の上に泛んでゐる。
 そこは、下野煉瓦製造工場。
 子供等は門の中へ入つてお辨當を置いてくると、急いで出て來て川向ふへ廻つた。
 圓い工場の丘を半分抱いて流れてる川の水は、土を搬んでくる小舟の爲に攪亂されて濁つてゐた。
 開け放たれた窓の奧に、高い天井から斜めに廻轉してる調帶《ベルト》の一部が、長蛇のやうに見えてゐた。そこから間斷なく切り出される大きい羊羮のやうな長方形の土塊は屋外に搬び出されると、手拭を冠つた女達の手に、一箇一箇と莚の上に並べられた。
 甘さうな水分を含んだ、
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