《かのぢよ》は毎晩《まいばん》ぐつしよりと、寢汗《ねあせ》をかいて眼《め》をさました。寢卷《ねまき》は濡《ぬ》れ紙《がみ》のやうに膚《はだ》にへばりついてゐた。
 その日《ひ》も、朝《あさ》早《はや》く彼女《かのぢよ》は起《お》き上《あが》らうとしたが、自分《じぶん》にどう鞭《むち》うつて見《み》ても、全身《ぜんしん》のひだるさ[#底本ママ]には勝《か》てなかつた。立《た》ち上《あが》ると激《はげ》しい眩暈《めまひ》がした。周圍《しうゐ》がシーンとして物音《ものおと》がきこえなくなつた。體《からだ》はエレベーターのやうに、地下《ちか》へ地下《ちか》へと降下《かうか》してゆくやうな氣持《きもち》だつた。そして遂《つひ》に彼女《かのぢよ》は意識《いしき》を失《うしな》つて了《しま》つた。
 間《ま》もなく、K夫人《ふじん》は間《あひだ》の襖《うすま》[#ルビは底本ママ]を開《あ》けて吃驚《びつくり》した。瞬間《しゆんかん》、自殺《じさつ》かと狼狽《らうばい》した程《ほど》、彼女《かのぢよ》は多量《たりやう》の咯血《かくけつ》の中《なか》にのめつてゐた。
 然《しか》し、夫人《ふじん》は氣《
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