彼女こゝに眠る
若杉鳥子
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)荊棘《いばら》
|:ルビの付いていない漢字とルビの付く漢字の境の記号
(例)一|緒《しよ》に
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)さむ/″\と光つてゐた。
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)髭《ひげ》[#底本では「髮」と誤記]さへ
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その夜《よ》の月《つき》は、紺碧《こんぺき》の空《そら》の幕《まく》からくり拔《ぬ》いたやうに鮮《あざ》やかだつた。
夜露《よつゆ》に濡《ぬ》れた草《くさ》が、地上《ちじやう》に盛《も》り溢《あふ》れさうな勢《いきほ》ひで、野《の》を埋《うづ》めてゐた。
『お歸《かへ》んなさい、歸《かへ》つて下《くだ》さい。』
『いえ。私《わたし》はもう歸《かへ》らないつもりです。』
『どこまでひとを困《こま》らせようといふんです。あなただつて子供《こども》ぢやああるまいし。』
草《くさ》の中《なか》に半身《はんしん》を沒《ぼつ》して、二人《ふたり》はいひ爭《あらそ》
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