さび》しい身《み》の上《うへ》だつた。彼女《かのぢよ》は、片山《かたやま》の同志《どうし》のK氏《し》の家《うち》に身《み》を寄《よ》せて、彼《かれ》の居所《ゐどころ》を搜《さが》してゐたが、その彼《かれ》が、I刑務所《けいむしよ》の未決監《みけつかん》にゐると判《わか》つたのは、行方不明《ゆくへふめい》になつてから、半年《はんとし》もの後《のち》だつた。
それから彼女《かのぢよ》は毎晩《まいばん》、惡夢《あくむ》を見《み》た。片山《かたやま》が後手《うしろで》に縛《しば》り上《あ》げられて上《うへ》から吊《つ》るされてゐる、拷問《がうもん》の夢《ゆめ》である。[#底本では、この行頭の1字下げなし]
ある時《とき》は、隣室《りんしつ》に臥《ね》てゐるKの夫人《ふじん》に搖《ゆす》り起《おこ》されて眼《め》を覺《さ》ましたが、彼女《かのぢよ》にはそれが單《たん》に夢《ゆめ》とばかり、打《う》ち消《け》すことができなかつた。何故《なぜ》なら、その頃《ころ》、さういふ野蠻《やばん》な戰慄《せんりつ》すべき噂《うはさ》が、世間《せけん》に喧《やかま》しく傳《つた》はつてゐたからだ。
彼女
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