ない……』
『さうぢやない、さうぢやないが……』
『いえ、あなたは、私《わたし》といふ女《をんな》が、あなたの足手纒《あしてまと》ひになる厄介《やくかい》な女《をんな》だと思《おも》つて、その癖《くせ》に今《いま》まで……』
『昂奮《こうふん》しないでお聽《き》きなさいツ。ではこれから自分達《じぶんたち》の行《ゆ》く道《みち》が、どんなに嶮《けは》しい、文字《もじ》通《どほ》りの荊棘《いばら》の道《みち》だつてことが、生々《なま/\》しい現實《げんじつ》として、お孃《ぢやう》さん、ほんとにあなたにわかつてゐるんですか……』
彼等《かれら》の爭《あらそ》ひ[#底本ではルビは「あら」と誤記]は、際限《はてし》もなく續《つゞ》いた。さうして夜《よ》が更《ふ》けて行《い》つた。
……だがその夜《よ》始《はじ》めて、彼女《かのぢよ》は戀人《こひびと》の激《はげ》しい熱情《ねつじやう》に身《み》を投《とう》じたのだつた。
彼女《かのぢよ》が、戀人《こひびと》の片山《かたやま》と一|緒《しよ》に生活《せいくわつ》したのは、僅《わづか》かに三ヶ|月《げつ》ばかりだつた。彼《かれ》がその屬《ぞく
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