全然《ぜんぜん》異《ちが》つた柔《やさ》しさでいつた。
『ね、解《わか》つて下《くだ》さい。僕《ぼく》は塒《ねぐら》さへ持《も》つてゐない、浮浪人《ふらうにん》に等《ひと》しい男《をとこ》なんですよ。』
『知《し》つてます、そんなこと。』
『それにです、明日《あす》どうなるかも解《わか》らない體《からだ》なんです。』
『みんな、よく私《わたし》は解《わか》つてゐるんです。』
『今夜《こんや》あなたのお父《とう》さんが、僕《ぼく》を罵倒《ばたう》して追《お》ひ出《だ》したのも、親《おや》として無理《むり》なことではありません。全《まつた》く僕《ぼく》といふ男《をとこ》は、あなたを何《なに》ひとつ幸福《かうふく》にしてあげる事《こと》なんかできない人間《にんげん》なんですから……』
『ぢやあ、あなたは私《わたし》を輕蔑《けいべつ》してらつしやるんだ。』
『なにいつてるんですツ』
『だつてあなたは、私《わたし》がやつぱし、父《ちゝ》のいふ意味《いみ》の幸福《かうふく》な結婚《けつこん》を求《もと》め、さうしてまた、それに滿足《まんぞく》して生《い》きてられる女《をんな》だとしか思《おも》つて
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