で先刻《さつき》から幾度《いくど》も、證明書《しようめいしよ》お持《も》ちですかつて、婦長《ふちやう》さんが顏《かほ》を出《だ》しました。』
『十|日《か》分《ぶん》の入院料《にふゐんれう》を前金《まへきん》で納《をさ》めろですつて、今日《けふ》明日《あす》にも知《し》れない重態《ぢうたい》な病人《びやうにん》だのに――ほんとに、キリスト樣《さま》の病院《びやうゐん》だなんて、何處《どこ》に街《まち》の病院《びやうゐん》と異《ちが》ふ處《ところ》があるんだ。』
Cの母堂《ぼだう》まで憤慨《ふんがい》した。
K氏《し》はすぐに、村役場《むらやくば》へ證明書《しようめいしよ》を貰《もら》ひに出《で》て行《い》つたが、失望《しつばう》して歸《かへ》つて來《き》た。證明書《しようめいしよ》なるものが下附《かふ》されるには、十|日《か》かゝるか二十日《はつか》かゝるか、解《わか》らないといふ事《こと》だつた。事態《じたい》はそんなものを待《ま》つてはゐられなかつた。
その朝《あさ》は、もう病人《びやうにん》の爪先《つまさき》を紫色《むらさきいろ》に染《そ》めて、チアノーゼ[#底本では「チ
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