》の事《こと》ですよ。先刻《さつき》、僕《ぼく》が此處《ここ》へ入《はひ》らうとすると、例《れい》のあの牧師《ぼくし》上《あが》りの會計《くわいけい》の老爺《おやぢ》が呼《よ》び止《と》めるのです。それから事務所《じむしよ》へ行《い》つて今《いま》までゐたんですが、施療《せれう》は村役場《むらやくば》の證明書《しようめいしよ》のない患者《くわんじや》には絶對《ぜつたい》にできない規定《きてい》だといふんです。だから十|日《か》分《ぶん》の入院料《にふゐんれう》を前金《ぜんきん》で即時《そくじ》に納《をさ》めろといふんです。だが、ないものは拂《はら》へないからそこは宗教《しうけう》の力《ちから》で、何《なん》とか便宜《べんぎ》を計《はか》つてはくれまいかと嘆願《たんぐわん》して見《み》たんですが、彼奴《あいつ》はどうして、規定《きてい》は規定《きてい》だから、證明書《しようめいしよ》もなく金《かね》もないなら、すぐに病人《びやうにん》を連《つ》れてゆけつて酷《ひど》い事《こと》をぬかしやがる、此方《こつち》もつい嚇《かつ》として呶鳴《どな》つて來《き》ちやつたんですが…………』
『だうり
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