頽廃的な何等××とは縁のないものとして批判し尽くされた。だがまだ日本ではこの小ブル的な恋愛観が何か新しいものでもあるかの如く問題にされている。
 その時にあって、前に述べたこの二人の男女は、どんな風に恋愛を考えているか、或いは又実行に移しているか? 読者はいま此処に発表する十通の手紙――牢獄の夫から妻に宛てた――を読んでゆかれたなら、闘争の嵐の中に戦う二人の姿を、はっきりと見出し、この圧搾された愛情を、如何に貴く痛感されることであろう。この手紙の書かれた季節は、春から夏にかけてであって、手紙と手紙の間の欠けている処もあるが、日附順に並べて行こう。

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 一ヶ月振りで君の手紙を見た。
 そしていつもそうには違いないが、特に昨夜の手紙には、いささか幸福を感じた。実際君は、誰に指導されなくても自分自身で、自分の思ったことを実行してゆけるようではないか。それならばそれが一番いいことだと僕は思う。だから是非そうして、しっかりやってくれ給え!
 それから君はKに就いて不備を洩らしているが、Kは僕にとっては事実いい友達なのだ。然し決して「同志」ではなかった。この事をよく考えなければ
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