新しき夫の愛
―― 牢獄の夫より妻への愛の手紙 ――
若杉鳥子

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)時期《とき》に

|:ルビの付いていない漢字とルビの付く漢字の境の記号
(例)近頃|閑《ひま》になったせいか

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、底本のページと行数)
(例)[#この行は注記、202−10]

本文中、伏せ字は「*」であらわした。
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 山内ゆう子――私は一人の新しい女性を紹介する。見た処彼女はまだほんの初々しい、はにかみがちな少女に過ぎない。だが少し相対して話していると、聡明な実にしっかりした女性であることが解ってくる。
 彼女の生まれは九州だそうだが、父が地方長官をしていた関係で、女学校を東北のA市で卒業した。父の没後は、母と一緒に東京の郊外に棲み、女子**に通学していた。卒業後は独自の生活を立てながら、医学の研究を続けてゆく決心でいたが、美しい彼女のもとへは女学校時代から、結婚の申し込みが殺到していた。それに、財務官をしている叔父夫妻までが、彼女のお嫁入りの世話に躍起となっていた。――だが本人はとい
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