ある事を心細く思いました。
十五円の中、
円 銭
一〇、 食料及び炭,油
六〇 湯銭
六〇 郵便
二、七〇 電車券私用分(三十日)
一、一〇 小遣い
と計算立てて見ましたが、此の中から英語の月謝を出そうと思っても出ません。既に郵便の六十銭は不足、一円十銭のお小遣いでは足袋が切れても、下駄が悪くなっても買えません。それに半襟が汚れるとか化粧品を買うとか、臨時費が多く出ますから足りる筈がありません。書物も買えず勉強も出来ない、これでは仕様がないと思って、知り合いの妻君に相談しますと、東京の生活は百円でも出来れば、五円でも出来るという。食料の方から月謝位出そうなものですねと云いました。
それから直ぐその素人下宿を退いて、神田の裏長屋同然の家へ行きました。元、郷里《くに》の家に居た下男が独身で世帯を持っているのです。其処へ同居してから自炊もして見ました。その男はかなり忠実な人で、夜の中に水を汲み込んだり、薪の用意もして呉れまして、夜の明けぬ中に労働に出て了います。
雪の日に
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