ロと見られるのが辛くて、居堪えられませんでしたが、自分は今訪問記者であるという自覚を強くして、問題を提出すると、『自分の答うべき問題ではない。』とある。それでは何でもお考えつきの事を、というと、『私は学校の長としても、一家の主婦としても多忙な身で新聞の種子《たね》など考えている閑暇《ひま》はなかった。』という情けない言葉。全く女史の仰有《おっしゃ》る如く、問題の適不適を考えて持って行くべきでしょうが、此の問題ならあの人は熱をもって話すだろうと思っても、決して然うはゆかぬ場合もあるのですもの。

       我侭者も遂に服従
 余りの侮辱に堪え兼ねて、一層新聞記者なんか止めて、再び父母の懐中へ帰って、服従の日を送ろうとまで思ったのは、此の時許りでは御座いませんでした。今になって見れば、女史に感謝すべき処が大いにあります。
 初めの程は虚栄心に駆らるる事もなく、極く真面目に仕事の事にのみ追われて、一日の中に何物をか得なければ忽ち日刊新聞の事だから、あとからあとからと追われますのみか、編輯上の都合が悪くなるのですが、丁度留守の処へ行ったり、居ても逢えなかったり、引っ越しの後を追って見ても知
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