》ともいえない気味《きみ》の悪《わる》い顔《かお》をした、いろいろな化《ば》け物《もの》が押《お》しくらをしておりました。
 そのうちお酒《さけ》が出《で》ますと、みんなお互《たが》いに土器《かわらけ》のお杯《さかずき》をうけたり、さしたり、まるで人間《にんげん》のするとおりの、楽《たの》しそうなお酒盛《さかも》りがはじまりました。
 お杯《さかずき》の数《かず》がだんだん重《かさ》なるうちに、おかしららしい鬼《おに》は、だれよりもよけいに酔《よ》って、さもおもしろそうに笑《わら》いくずれていました。すると下座《しもざ》の方《ほう》から、一人《ひとり》の若《わか》い鬼《おに》が立《た》ってきて、お三方《さんぼう》の上に食《た》べ物《もの》をのせて、おそるおそるおかしらの鬼《おに》の前《まえ》へ持《も》って出ました。そして何《なに》かわけの分《わ》からないことをしきりにいっているようです。おかしらの鬼《おに》もお杯《さかずき》を左《ひだり》の手に持《も》って、おもしろそうに笑《わら》いながら聞《き》いています。その様子《ようす》は少《すこ》しも人間《にんげん》と違《ちが》ったところはあり
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