左《ひだり》のほおに、やはり同《おな》じような瘤《こぶ》のあるおじいさんがありました。おじいさんの瘤《こぶ》のいつの間《ま》にか無《な》くなったのを見《み》て、ふしぎそうに、
「おじいさん、おじいさん、あなたの瘤《こぶ》はどこへいきました。だれか上手《じょうず》なお医者《いしゃ》さまに切《き》ってもらったのですか。どこだかそのお医者《いしゃ》さまのうちを教《おし》えて下《くだ》さい。わたしも行《い》って取《と》ってもらいましょう。」
とうらやましそうにたずねました。
 おじいさんは、
「なあに、これはお医者《いしゃ》さまに切《き》ってもらったのではありません。ゆうべ山の中で鬼《おに》が取《と》っていったのです。」
 といいました。
 するとお隣《となり》のおじいさんはひざを乗《の》り出《だ》して、
「それはいったいどういうわけです。」
 と、びっくりした顔《かお》をしました。
 そこでおじいさんは、こういうわけで踊《おど》りを踊《おど》ったら、後《あと》でしち[#「しち」に傍点]に取《と》られたのだといって、くわしい話《はなし》をしました。お隣《となり》のおじいさんは、
「いいことを聞
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