ると、中はきれいにからになっていました。
「これこれ、小僧《こぞう》。きさまが食《た》べたのだな。」
と、和尚《おしょう》さんは大きな声《こえ》でどなりつけました。すると小僧《こぞう》はすまして、のこのこやって来《き》て、
「へええ、とんでもない、そんなことがあるものですか。」
といいながら、そこらをきょろきょろ見《み》まわして、
「ああ、わかりました。御本尊《ごほんぞん》の金仏《かなぶつ》さまが上《あ》がったのです。ほら、あのとおりお口のはたに、あんこがいっぱいついています。」
と、こういうと、和尚《おしょう》さんはそれを見《み》て、
「なるほどあんこがついている。お行儀《ぎょうぎ》のわるい金仏《かなぶつ》さまもあればあったものだ。」
といいながら、おこって手に持《も》っていた払子《ほっす》で、金仏《かなぶつ》さまの頭《あたま》を一つくらわせました。すると「くわん、くわん。」と金仏《かなぶつ》さまは鳴《な》りました。
「なに、くわんことがあるものか。」
と、またおこって二|度《ど》つづけざまにたたきますと、また「くわん、くわん。」と鳴《な》りました。
そこで和尚《おしょう
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