のふちにたまったあんこを、指《ゆび》でかきよせては、こてこてとぬりつけました。そして重箱《じゅうばこ》を阿弥陀《あみだ》さまの前《まえ》に置《お》いて、部屋《へや》に帰《かえ》って来《き》て、知《し》らん顔《かお》をしてお経《きょう》を読《よ》んでいました。
しばらくすると、和尚《おしょう》さんは帰《かえ》って来《き》て、小僧《こぞう》に、
「留守《るす》にだれも来《こ》なかったか。」
とたずねました。
「お隣《となり》のおばあさんが、お重箱《じゅうばこ》を持《も》って来《き》ました。おひがんだから和尚《おしょう》さんに上《あ》げて下《くだ》さいといいました。」
と、小僧《こぞう》は答《こた》えました。
「その重箱《じゅうばこ》はどこにある。」
「本堂《ほんどう》の御本尊《ごほんぞん》さまの前《まえ》に上《あ》げて置《お》きました。」
「うん、それはなかなか気《き》が利《き》いている。どれ、どれ。」
といいながら、和尚《おしょう》さんは本堂《ほんどう》へ行ってみますと、なるほど重箱《じゅうばこ》がうやうやしく、御本尊《ごほんぞん》の前《まえ》に上《あ》がっていましたが、あけてみ
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