してしまえば、どうせけちんぼで欲《よく》ばりの和尚《おしょう》さんのことだから、みんな自分《じぶん》で食《た》べてしまって、一つもくれないにきまっている。よしよし、ちょうどいい、ねむけざましに食《た》べてやれ。」
 と、こう独《ひと》り言《ごと》をいいながら、ふろしき包《づつ》みをほどくと、大きなお重箱《じゅうばこ》にいっぱい、おいしそうなお団子《だんご》がつまっていました。小僧《こぞう》はにこにこしながら、お団子《だんご》をほおばって、もう一つ、もう一つと、食《た》べるうちに、とうとうお重箱《じゅうばこ》にいっぱいのお団子《だんご》を、きれいに食《た》べてしまいました。食《た》べてしまって、小僧《こぞう》ははじめて気《き》がついたように、
「ああ、しまった。和尚《おしょう》さんが帰《かえ》って来《き》たらどうしよう。」
 と、困《こま》ってべそをかきました。するうち、ふと何《なに》か思《おも》いついたとみえて、いきなりお重箱《じゅうばこ》をかかえて、本堂《ほんどう》へ駆《か》け出《だ》して行きました。そして御本尊《ごほんぞん》の阿弥陀《あみだ》さまのお口のまわりに、重箱《じゅうばこ》
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