いいました。和尚《おしょう》さんは大《たい》そうよろこんで、出《だ》してやりました。するとその晩《ばん》子供《こども》が、一人《ひとり》鐘撞堂《かねつきどう》に上《あ》がって鐘《かね》をつこうとしますと、どこからか鬼《おに》が出て来《き》て、うしろから頭《あたま》をつかまえました。子供《こども》は、
「うるさい、何《なに》をするのだ。」
 といったまま、かまわず撞木《しゅもく》に手をかけますと、その手をまた鬼《おに》がつかみました。子供《こども》はおこって、あべこべに鬼《おに》の頭《あたま》をつかみました。そしていきなり鬼《おに》の首《くび》を引《ひ》き抜《ぬ》こうとしました。鬼《おに》はびっくりして、「これは驚《おどろ》いた、とんでもないやつが出てきた。」と思《おも》って、逃《に》げ出《だ》そうとしました。けれど子供《こども》はしっかり鬼《おに》の頭《あたま》をつかまえていて放《はな》しません。鬼《おに》は苦《くる》しまぎれに子供《こども》の髪《かみ》の毛《け》をつかんで、負《ま》けずにこれも首《くび》を引《ひ》き抜《ぬ》こうと骨《ほね》を折《お》りました。どちらも負《ま》けず劣《お
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