雷のさずけもの
楠山正雄
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)尾張国《おわりのくに》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)一|本《ぽん》の大きな木
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一
むかし、尾張国《おわりのくに》に一人《ひとり》のお百姓《ひゃくしょう》がありました。ある暑《あつ》い夏《なつ》の日にお百姓《ひゃくしょう》は田の水《みず》を見《み》に回《まわ》っていますと、急《きゅう》にそこらが暗《くら》くなって、真《ま》っ黒《くろ》な雲《くも》が出てきました。するうち雲《くも》の中からぴかりぴかり稲妻《いなずま》がはしり出《だ》して、はげしい雷《かみなり》がごろごろ鳴《な》り出《だ》しました。やがてひどい大夕立《おおゆうだち》になりました。お百姓《ひゃくしょう》は「桑原《くわばら》、桑原《くわばら》。」と唱《とな》えながら、頭《あたま》をかかえて一|本《ぽん》の大きな木の下に逃《に》げ込《こ》んで、夕立《ゆうだち》の通《とお》りすぎるのを待《ま》っていました。すると間《ま》もなく、がらがらッと、天《てん》も地《ち》もいっしょに崩《くず》れ落《お》ちたか
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