と思《おも》うようなすさまじい音《おと》がしました。お百姓《ひゃくしょう》は思《おも》わず耳《みみ》を押《お》さえて、地《ち》の上につっ伏《ぷ》しました。
 しばらくしてこわごわ起《お》き上《あ》がってみますと、つい五六|間先《けんさき》に大きな光《ひか》り物《もの》がころげていました。お百姓《ひゃくしょう》はふしぎに思《おも》って、そっとそばに寄《よ》ってみますと、それは奇妙《きみょう》な顔《かお》をして、髪《かみ》の毛《け》の逆立《さかだ》った、体《からだ》の真《ま》っ赤《か》な、子供《こども》のような形《かたち》のものでした。
 これは雷《かみなり》があんまり調子《ちょうし》に乗《の》って、雲《くも》の上を駆《か》け回《まわ》るひょうしに、足《あし》を踏《ふ》みはずして、地《ち》の上に落《お》ちて、目を回《まわ》したのでした。お百姓《ひゃくしょう》は、
「ははあ、なるほど、これが話《はなし》に聞《き》いた雷《かみなり》かな。何《なん》だ、こんなちっぽけな、子供《こども》みたいなものなのか。」
 と思《おも》いながら、半分《はんぶん》は気味《きみ》が悪《わる》いので、いきなり鍬《く
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