お妃《きさき》はいつものように御殿《ごてん》の中を歩《ある》きながら、お厩《うまや》の戸口《とぐち》までいらっしゃいますと、にわかにお産気《さんけ》がついて、そこへ安々《やすやす》と美《うつく》しい男《おとこ》の御子《みこ》をお生《う》みおとしになりました。召使《めしつか》いの女官《じょかん》たちは大《おお》さわぎをして、赤《あか》さんの皇子《おうじ》を抱《だ》いて御産屋《おうぶや》へお連《つ》れしますと、御殿《ごてん》の中は急《きゅう》に金色《こんじき》の光《ひかり》でかっと明《あか》るくなりました。そして皇子《おうじ》のお体《からだ》からは、それはそれは不思議《ふしぎ》なかんばしい香《かお》りがぷんぷん立《た》ちました。
お厩《うまや》の戸《と》の前《まえ》でお生《う》まれになったというので、皇子《おうじ》のお名《な》を厩戸皇子《うまやどのおうじ》と申《もう》し上《あ》げました。後《のち》に皇太子《こうたいし》にお立《た》ちになって、聖徳太子《しょうとくたいし》と申《もう》し上《あ》げるのはこの皇子《おうじ》のことでございます。
二
さて太子《たいし》はお生《う》
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