まれになって四月《よつき》めには、もうずんずんお口をお利《き》きになりました。明《あ》くる年《とし》の二|月《がつ》十五|日《にち》は、お釈迦《しゃか》さまのお亡《な》くなりになった御涅槃《ごねはん》の日でしたが、二|歳《さい》になったばかりの太子《たいし》は、かわいらしい両手《りょうて》をお合《あ》わせになり、西《にし》の方《ほう》の空《そら》に向《む》かって、
「南無釈迦仏《なむしゃかぶつ》。」
 とお唱《とな》えになったので、おつきの人たちはみんなびっくりしてしまいました。
 太子《たいし》が六|歳《さい》の時《とき》でした。はじめて朝鮮《ちょうせん》の国《くに》から、仏《ほとけ》さまのお経《きょう》をたくさん献上《けんじょう》してまいりました。するとある日《ひ》太子《たいし》は、天子《てんし》さまのお前《まえ》へ出て、
「外国《がいこく》からお経《きょう》がまいったそうでございます。わたくしに読《よ》ませて頂《いただ》きとうございます。」
 とお申《もう》し上《あ》げになりました。
 天皇《てんのう》はびっくりなすって、
「どうしてお前《まえ》にお経《きょう》が分《わ》かるだろ
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