の朝《あさ》、太子《たいし》は夢殿《ゆめどの》からお出《で》ましになって、
「先《せん》だって小野妹子《おののいもこ》の取《と》って来《き》てくれた法華経《ほけきょう》は、衡山《こうざん》の坊《ぼう》さんがぼけていたと見《み》えて、わたしの持《も》っていたのでないのをまちがえてよこしたから、魂《たましい》をシナまでやって取《と》って来《き》たよ。」
とおっしゃいました。
その後《のち》また小野妹子《おののいもこ》が二|度《ど》めにシナへ渡《わた》った時《とき》、衡山《こうざん》のお寺《てら》を訪《たず》ねると、前《まえ》にいた三|人《にん》の坊《ぼう》さんの二人《ふたり》までは死《し》んでしまって、一人《ひとり》だけ生《い》き残《のこ》っておりましたが、その坊《ぼう》さんの話《はなし》に、
「先年《せんねん》あなたのお国《くに》の太子《たいし》が青《あお》い龍《りゅう》の車《くるま》に乗《の》って、五百|人《にん》の家来《けらい》を従《したが》えて、はるばる東《ひがし》の方《ほう》から雲《くも》の上を走《はし》っておいでになって、古《ふる》い法華経《ほけきょう》の一|巻《かん》を取
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