》の小坊主《こぼうず》が立《た》っていました。妹子《いもこ》がこうこういう者《もの》だといって案内《あんない》をたのみますと、小坊主《こぼうず》はもう前《まえ》から知《し》っているといったように、
「和尚《おしょう》さん、和尚《おしょう》さん、思禅法師《しぜんほうし》のお使《つか》いがおいでになりましたよ。」
 といいました。するとお寺《てら》の中から腰《こし》の曲《ま》がったおじいさんの坊《ぼう》さんが三|人《にん》、ことこと杖《つえ》をつきながら、さもうれしそうにやって来《き》て、太子《たいし》の御様子《ごようす》をたずねるやら、昔話《むかしばなし》をするやらしたあとで、妹子《いもこ》のいうままに、一|巻《かん》の古《ふる》い法華経《ほけきょう》を出《だ》して渡《わた》しました。妹子《いもこ》はそれを持《も》って、日本《にほん》へ帰《かえ》ったということです。

     四

 太子《たいし》のお住《す》まいになっていたお宮《みや》は大和《やまと》の斑鳩《いかるが》といって、今《いま》の法隆寺《ほうりゅうじ》のある所《ところ》にありましたが、そこの母屋《おもや》のわきに、太子《た
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