#「うんめい」に傍点]だったことをさとって、お姫さまを、そのまま、お城のなかでも、いちばん上等のへやにつれて行かせ、金と銀のぬいとりをした、[#「、」は底本では「。」]きれいなねだいの上にねかしました。
 ねだいの上に、すやすや眠っておいでになるお姫さまの、美しさといってはありません。それはちいさな天使だといってもいいくらいでした。人ごこちがなくなっていても、生きているとおりの顔いろをしていて、ほおは、せきちく色をしていましたし、くちびるは、さんご[#「さんご」に傍点]をならべたようでした。目こそつぶってはいますものの、かすかに息をする音は聞こえます。それで、王女が死んでいないということがわかったので、まわりについている人たちは、よろこんでいました。
 王様はそこで、やがて人が来て、目をさまさせるまで、しずかにねかしておくようにと、きびしくおいいつけになりました。
 さて、王女を百年のあいだ眠らせることにして、やっと、あやういいのち[#「いのち」に傍点]をとりとめた、あの心のいい妖女は、ちょうどこのさわぎの起こったとき、一|万《まん》二千|里《り》はなれた、マタカン国に行っていましたが
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