た。「なんてきれいなんでしょう。それはどういうふうにやるものなの。あたしにかしてごらんなさいな。あたしにもできるかどうか、やってみたいから。」
 お姫さまは、こういって、そのつむを、手にとりましたが、それは持ち方がいけなかったのか、たいへんあわてて、ぶきような持ち方をしたのか、それとも、あのわるい妖女《ようじょ》ののろいのことばが、いよいよしるしをあらわすときになったのか、とたん、つむ[#「つむ」に傍点]は、いきなり王女の手にささって、王女はばったり、そこに倒《たお》れてしまいました。
 人のいいおばあさんは、あわてて人を呼びました。みんな、お城のそこからもここからも、かけ出してきました。お姫さまの顔に水をそそぎかけたり、ひもをといて着物をゆるめたり、手のひらをたたいてみたり、ハンガリア女王の水という薬で、こめかみ[#「こめかみ」に傍点]をもんだり、いろいろにしてみても、王女は息をふきかえしませんでした。
 さて、王様はこのさわぎを聞いて、さっそくかけつけておいでになりました。そうして十五年むかしの妖女《ようじょ》のよげん[#「よげん」に傍点]を思い出しながら、やはりこうなるうんめい[
前へ 次へ
全20ページ中7ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
楠山 正雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング