毛《け》が生《は》えて、手足《てあし》が生《は》えて、綱渡《つなわた》りの軽《かる》わざから、浮《う》かれ踊《おど》りのふしぎな芸当《げいとう》、評判《ひょうばん》じゃ、評判《ひょうばん》じゃ。」
と呼《よ》び立《た》てました。
往来《おうらい》の人たちは、ふしぎな看板《かんばん》とおもしろそうな口上《こうじょう》に釣《つ》られて、ぞろぞろ見世物小屋《みせものごや》へ詰《つ》めかけて来《き》て、たちまち、まんいんになってしまいました。
やがて拍子木《ひょうしぎ》が鳴《な》って、幕《まく》が上《あ》がりますと、文福《ぶんぶく》茶《ちゃ》がまが、のこのこ楽屋《がくや》から出て来《き》て、お目見《めみ》えのごあいさつをしました。見《み》るとそれは思《おも》いもつかない、大きな茶《ちゃ》がまに手足《てあし》の生《は》えた化《ば》け物《もの》でしたから、見物《けんぶつ》はみんな「あっ。」と言《い》って目をまるくしました。
それだけでもふしぎなのに、その茶《ちゃ》がまの化《ば》け物《もの》が両方《りょうほう》の手《て》に唐傘《からかさ》をさして扇《おうぎ》を開《ひら》いて、綱《つな》の上に
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