両足《りょうあし》をかけました。そして重《おも》い体《からだ》を器用《きよう》に調子《ちょうし》をとりながら、綱渡《つなわた》りの一|曲《きょく》を首尾《しゅび》よくやってのけましたから、見物《けんぶつ》はいよいよ感心《かんしん》して、小屋《こや》もわれるほどのかっさいをあびせかけました。
 それからは何《なに》をしても、文福《ぶんぶく》茶《ちゃ》がまが変《か》わった芸当《げいとう》をやって見《み》せるたんびに、見物《けんぶつ》は大喜《おおよろこ》びで、
「こんなおもしろい見世物《みせもの》は生《う》まれてはじめて見《み》た。」
 とてんでんに言《い》いあって、またぞろぞろ帰《かえ》っていきました。それからは文福《ぶんぶく》茶《ちゃ》がまの評判《ひょうばん》は、方々《ほうぼう》にひろがって、近所《きんじょ》の人はいうまでもなく、遠国《えんごく》からもわざわざわらじがけで見《み》に来《く》る人で毎日《まいにち》毎晩《まいばん》たいへんな大入《おおい》りでしたから、わずかの間《ま》にくず屋《や》は大金持《おおがねも》ちになりました。
 そのうちにくず屋《や》は、「こうやって文福《ぶんぶく》
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