」
「さあ、さし当《あ》たり綱渡《つなわた》りの軽《かる》わざに、文福《ぶんぶく》茶《ちゃ》がまの浮《う》かれ踊《おど》りをやりましょう。もうくず屋《や》なんかやめてしまって、見世物師《みせものし》におなんなさい。あしたからたんとお金《かね》がもうかりますよ。」
こう言《い》われてくず屋《や》はすっかり乗《の》り気《き》になってしまいました。そして茶《ちゃ》がまのすすめるとおりくず屋《や》をやめてしまいました。
そのあくる日|夜《よ》が明《あ》けると、くず屋《や》はさっそく見世物《みせもの》のしたくにかかりました。まず町《まち》の盛《さか》り場《ば》に一|軒《けん》見世物小屋《みせものごや》をこしらえて、文福《ぶんぶく》茶《ちゃ》がまの綱渡《つなわた》りと浮《う》かれ踊《おど》りの絵《え》をかいた大看板《おおかんばん》を上《あ》げ、太夫元《たゆうもと》と木戸番《きどばん》と口上《こうじょう》言《い》いを自分《じぶん》一人《ひとり》で兼《か》ねました。そして木戸口《きどぐち》に座《すわ》って大きな声《こえ》で、
「さあ、さあ、大評判《おおひょうばん》の文福《ぶんぶく》茶《ちゃ》がまに
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