ま》にか毛《け》むくじゃらな頭《あたま》と太《ふと》いしっぽを出《だ》して、ちょこなんと座《すわ》っていました。くず屋《や》はびっくりして、はね起《お》きました。
「やあ、たいへん。茶《ちゃ》がまが化《ば》けたぞ。」
「くず屋《や》さん、そんなにおどろかないでもいいよ。」
「だっておどろかずにいられるものかい。茶《ちゃ》がまに毛《け》がはえて歩《ある》き出《だ》せば、だれだっておどろくだろうじゃないか。いったいお前《まえ》は何《なん》だい。」
「わたしは文福《ぶんぶく》茶《ちゃ》がまといって、ほんとうはたぬきの化《ば》けた茶《ちゃ》がまですよ。じつはある日|野原《のはら》へ出て遊《あそ》んでいるところを五、六|人《にん》の男《おとこ》に追《お》いまわされて、しかたなしに茶《ちゃ》がまに化《ば》けて草《くさ》の中にころがっていると、またその男《おとこ》たちが見《み》つけて、こんどは茶《ちゃ》がまだ、茶《ちゃ》がまだ、いいものが手《て》に入《はい》った。これをどこかへ売《う》りとばして、みんなでうまいものを買《か》って食《た》べようと言《い》いました。それでわたしは古道具屋《ふるどうぐや》
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