さわぎ出《だ》しました。その音《おと》に和尚《おしょう》さんは目をさまして、
「やかましい、何《なに》をさわぐのだ。」
と目をこすりながらしかりました。
「でも和尚《おしょう》さん、ごらんなさい。ほら、あのとおり茶《ちゃ》がまが歩《ある》きますよ。」
こうてんでんに言《い》うので、和尚《おしょう》さんも小僧《こぞう》さんたちの指《ゆび》さす方《ほう》を見《み》ますと、茶《ちゃ》がまにはもう頭《あたま》も足《あし》もしっぽもありません。ちゃんともとの茶《ちゃ》がまになって、いつの間《ま》にか布団《ふとん》の上にのって、すましていました。和尚《おしょう》さんはおこって、
「何《なん》だ。ばかなことを言《い》うにもほどがある。」
「でもへんだなあ。たしかに歩《ある》いていたのに。」
こう言《い》いながら小僧《こぞう》さんたちはふしぎそうに、寄《よ》って来《き》て茶《ちゃ》がまをたたいてみました。茶《ちゃ》がまは「かん。」と鳴《な》りました。
「それみろ。やっぱりただの茶《ちゃ》がまだ。くだらないことを言《い》って、せっかくいい心持《こころも》ちに寝《ね》ているところを起《お》こしてしま
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