お居間《いま》に茶《ちゃ》がまを飾《かざ》ったまま、そのそばでうとうと居眠《いねむ》りをしていました。そのうちほんとうにぐっすり、寝込《ねこ》んでしまいました。
 和尚《おしょう》さんのお部屋《へや》があんまり静《しず》かなので、小僧《こぞう》さんたちは、どうしたのかと思《おも》って、そっと障子《しょうじ》の透《す》き間《ま》から中をのぞいてみました。すると和尚《おしょう》さんのそばに布団《ふとん》をしいて座《すわ》っていた茶《ちゃ》がまが、ひとりでにむくむくと動《うご》き出《だ》しました。「おや。」と思《おも》ううちに、茶《ちゃ》がまからひょっこり頭《あたま》が出て、太《ふと》いしっぽがはえて、四|本《ほん》の足《あし》が出て、やがてのそのそとお部屋《へや》の中を歩《ある》き出《だ》しました。
 小僧《こぞう》さんたちはびっくりして、お部屋《へや》の中へとび込《こ》んで来《き》て、
「やあ、たいへんだ。茶《ちゃ》がまが化《ば》けた。」
「和尚《おしょう》さん、和尚《おしょう》さん。茶《ちゃ》がまが歩《ある》き出《だ》しましたよ。」
 と、てんでんにとんきょうな声《こえ》を立《た》てて
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