て柔《やわ》らかだったので、それではおかあさんにちがいないと思《おも》って、子供《こども》たちは戸《と》をあけて、山姥《やまうば》を中へ入《い》れました。

       二

 おかあさんに化《ば》けた山姥《やまうば》は、うちの中に入《はい》ると、さっそくお夕飯《ゆうはん》にして、子供《こども》たちがびっくりするほどたくさん食《た》べて、今夜《こんや》はくたびれたから早《はや》く寝《ね》ようといって、いつものとおり末《すえ》っ子《こ》の三郎《さぶろう》を連《つ》れて、奥《おく》の間《ま》に入《はい》って寝《ね》ました。太郎《たろう》と次郎《じろう》は二人《ふたり》で、おもての間《ま》に寝《ね》ました。
 夜中《よなか》にふと、太郎《たろう》と次郎《じろう》が目を覚《さ》ましますと、奥《おく》の間《ま》でだれかが、何《なん》だかぼりぼり物《もの》を食《た》べているような音《おと》がしました。それは山姥《やまうば》が、末《すえ》っ子《こ》の三郎《さぶろう》をつかまえて食《た》べているのでした。
「おかあさん、おかあさん、それは何《なん》の音《おと》ですか。」
 と、太郎《たろう》が聞《き
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