》きました。
「おなかがすいたから、たくあんを食《た》べているのだよ。」
 と、山姥《やまうば》がいいました。
「わたいも食《た》べたいなあ。」
 と、次郎《じろう》がいいました。
「さあ、上《あ》げよう。」
 と、山姥《やまうば》はいって、三郎《さぶろう》の小指《こゆび》をかみ切《き》って、子供《こども》たちの居《い》る方《ほう》へ投《な》げ出《だ》しました。太郎《たろう》がそれを拾《ひろ》ってみると、暗《くら》くってよく分《わ》かりませんけれど、何《なん》だか人間《にんげん》の指《ゆび》のようでした。太郎《たろう》はびっくりして、そっと布団《ふとん》の中で、次郎《じろう》の耳《みみ》にささやきました。
「奥《おく》に居《い》るのは山姥《やまうば》にちがいない。山姥《やまうば》がおかあさんに化《ば》けて、三郎《さぶろう》ちゃんを食《た》べているのだよ。ぐずぐずしていると、こんどはわたいたちが食《た》べられる。早《はや》く逃《に》げよう、逃《に》げよう。」
 太郎《たろう》と次郎《じろう》はそっと相談《そうだん》をしていますと、奥《おく》ではもりもり山姥《やまうば》が三郎《さぶろう》を
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