ました。猿《さる》はせっかく下まで駆《か》けて行ってみると、空臼《からうす》だったものですから、がっかりして、
「こらこら、早《はや》く餅《もち》をころがさないか。」
と下からどなりました。すると蟹《かに》はあざ笑《わら》って、
「つきたての餅《もち》が坂《さか》をころがるものか。今《いま》に堅《かた》くなってお鏡餅《かがみもち》になったら、ころがしてやろう。」
といいました。猿《さる》は腹《はら》を立てましたが、自分《じぶん》からいいだして、したことですから、しかたなしに蟹《かに》にあやまって、おしりの毛《け》を抜《ぬ》いて蟹《かに》にやって、半分《はんぶん》餅《もち》を分《わ》けてもらいました。それでいまだにお猿《さる》のおしりには毛《け》がなくなって、蟹《かに》の手足《てあし》には毛《け》が生《は》えているのだそうです。
狐《きつね》と獅子《しし》
むかし、日本《にっぽん》の狐《きつね》がシナに渡《わた》って、あちらのけだものたちの仲間《なかま》に入《はい》ってくらしていました。
ある時《とき》、けだものたちが、大ぜい森《もり》の中に集《あつ》まって、めいめ
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