な臼《うす》をころがしながらやって来《き》ました。
「どうだ。うまくいったじゃないか。さあ、食《た》べよう。」
 と、蟹《かに》がいいますと、
「うん、なかなか重《おも》いので骨《ほね》が折《お》れたよ。だがこれですぐ食《た》べては、楽《たの》しみがなくなっておもしろくないなあ。どうだ、この臼《うす》をここからころがすから、二人《ふたり》であとから追《お》っかけて行って、先《さき》に着《つ》いた者《もの》が餅《もち》を食《た》べることにしよう。」
 と、猿《さる》がいいました。
 すると蟹《かに》は口からあぶくを吹《ふ》きながら、
「猿《さる》さん、それはだめだよ。駆《か》けっくらをしたって、わたしがお前《まえ》にかなわないことは分《わ》かりきっているではないか。そんないじの悪《わる》いことをいわずに、仲《なか》よく半分《はんぶん》ずつ食《た》べよう。」
 と、こういいましたが、猿《さる》は聴《き》かないで、
「いやならよせ。おれが一人《ひとり》で食《た》べてしまう。重《おも》い思《おも》いをして、臼《うす》をかついで来《き》たのはおれだからなあ。」
 といいました。
「だって、わたし
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