任《さだとう》がかわいそうになって、その日はそのまま見逃《みのが》してかえしてやりました。
けれども一|度《ど》は逃《に》がしてやっても、いったい運《うん》の尽《つ》きたものはどうにもならないので、間《ま》もなく貞任《さだとう》は殺《ころ》され、弟《おとうと》の宗任《むねとう》も生《い》け捕《ど》りになって、奥州《おうしゅう》の荒《あら》えびすは残《のこ》らず滅《ほろ》びてしまいました。そこで頼義《よりよし》と義家《よしいえ》の二人《ふたり》は九|年《ねん》の苦《くる》しい戦《いくさ》の後《のち》、生《い》け捕《ど》りの敵《てき》を引《ひ》き連《つ》れて、めでたく京都《きょうと》へ凱旋《がいせん》いたしました。
三
京都《きょうと》へ帰《かえ》って後《のち》、敵《てき》の大将《たいしょう》の宗任《むねとう》はすぐに首《くび》を切《き》られるはずでしたけれど、義家《よしいえ》は、
「戦《いくさ》がすんでしまえば、もう敵《てき》も味方《みかた》もない。むだに人の命《いのち》を絶《た》つには及《およ》ばない。」
と思《おも》いました。そこで天子《てんし》さまに願《ねが》っ
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