》にきまったものを、もり返《かえ》して味方《みかた》の勝利《しょうり》にしました。
 それで戦《たたか》えば戦《たたか》うたんびに八幡太郎《はちまんたろう》の名《な》が高《たか》くなりました。さすがの荒《あら》えびすもふるえ上《あ》がって、しまいには八幡太郎《はちまんたろう》の名《な》を聞《き》いただけで逃《に》げ出《だ》すようになりました。
 けれども、強《つよ》いばかりが武士《ぶし》ではありません。八幡太郎《はちまんたろう》が心《こころ》のやさしい、神様《かみさま》のように情《なさ》けの深《ふか》い人だということは、敵《てき》すらも感《かん》じて、慕《した》わしく思《おも》うようになりました。
 それはもう長《なが》い長《なが》い九|年《ねん》の戦《たたか》いもそろそろおしまいになろうという時分《じぶん》のことでした。ある日はげしい戦《いくさ》のあとで、義家《よしいえ》は敵《てき》の大将《たいしょう》の貞任《さだとう》とただ二人《ふたり》、一|騎《き》打《う》ちの勝負《しょうぶ》をいたしました。そのうちとうとう貞任《さだとう》がかなわなくなって、馬《うま》の首《くび》を向《む》けか
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