前《まえ》の地《じ》びたに向《む》けて放《はな》しますと、矢《や》は絃《つる》をはなれて、やがてきつねのまん前《まえ》にひょいと立《た》ちました。するときつねはそれだけでもう目をまわして、くるりとひっくりかえると思《おも》うと、そのまま倒《たお》れて死《し》んでしまいました。
またある時《とき》義家《よしいえ》が時《とき》の大臣《だいじん》の御堂殿《みどうどの》のお屋敷《やしき》へよばれて行きますと、ちょうどそこには解脱寺《げだつじ》の観修《かんしゅう》というえらい坊《ぼう》さんや、安倍晴明《あべのせいめい》という名高《なだか》い陰陽師《おんみょうじ》や、忠明《ただあきら》という名人《めいじん》の医者《いしゃ》が来合《きあ》わせていました。その時《とき》ちょうど奈良《なら》から初《はつ》もののうりを献上《けんじょう》して来《き》ました。珍《めずら》しい大きなうりだからというので、そのままお盆《ぼん》にのせて四|人《にん》のお客《きゃく》の前《まえ》に出《だ》しました。するとまず安倍晴明《あべのせいめい》がそのうりを手にのせて、
「ほう、これは珍《めずら》しいうりだ。」
といって、眺
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